【事例研究】歯科医師による医療事故まとめ(7ページ目)

【事例研究】歯科医師が当時者となった医療事故7

過去に歯科医師が当事者となった医療事故の事例をまとめました。
歯科医師による医療事故を少しでも減らすため事例研究にお役立ていただければ幸いです。

※個別の事例についてのお問い合わせには応じかねます。予めご了承ください。

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事例151:不必要行為の実施に関する医療事故

実施した医療行為の目的

抜歯治療

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 上顎埋伏歯を抜歯するため、フィッシャーバーを用いて周囲歯槽を削除し、口腔内より口腔外へコントラアングルを引き抜いた。* その際に、下口唇と接触し下口唇及び下口唇粘膜の一部を損傷し、幅約1cm・深さ約5mm程度の挫創を生じた。
  • 挫創損傷に気付き、同部からの出血に対し圧迫止血を行った。
  • 患者には切削用の器具が下口唇部にあたったことで損傷したことを説明し、上顎埋伏歯の抜歯後に、下口唇の創部を3-0絹糸で2糸にて縫合した。

医療事故発生の要因

  • 上顎埋伏智歯周囲の骨を削除する際に、回転しているバーが誤って口唇部と接触したため、口唇部の損傷を生じた。

改善策

  • バーが回転している際には、下口唇部には接触しないように下口唇部を鉤等で保護する

事例152:使用方法指示間違いに関する医療事故

実施した医療行為の目的

抜歯時の歯根分割。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 局所麻酔下にて左下水平埋伏智歯抜歯時にフィッシャーバーを用いて歯根分割する際、バーの先端3mm程が破折して下顎骨内に埋入。
  • 除去しようと試みたが、更に押し込んだ形となり、一旦縫合。
  • レントゲン検査の結果、下歯槽神経近くにあることがわかり、改めて全身麻酔下にて異物摘出術を施行。

医療事故発生の要因

  • 歯根分割の処置に集中し、細いバーが折れやすいことの認識が不足していた。
  • 滅菌リユースのバーの可能性(外見上問題が無ければ通常滅菌リユースしており、今回使用のバーについては特定できていない。)
  • バーが折れた際に、当事者が除去しようとしたことで更に奥に入った可能性。

改善策

  • 細いバーを使用しての処置では、バーが破折する可能性について診療科内で共通認識する。
  • 今回の事例を共有する。
  • 口腔外科バーのディスポ化について検討する。事故発生時は、上級医に相談し対処する。

事例153:治療・処置の実施に関する内容に関する医療事故

実施した医療行為の目的

右側下顎水平埋伏智歯に対して外来にて静脈内鎮静法併用局所麻酔下にて抜歯術施行した。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 抜歯中、智歯の近心根が舌側骨壁を破り、顎下隙へ迷入した。

医療事故発生の要因

  • 下顎水平埋伏智歯の抜歯中、脱臼した近心根をヘーベルにて舌側へ押しこんだため、骨壁を破り、顎下隙へ迷入した。

改善策

  • 顎下隙迷入の可能性があることを考慮して注意して抜歯する。

事例154:治療・処置の管理に関する医療事故

実施した医療行為の目的

精神遅滞障害者のため、意思疎通が難しく抜歯及び充填処置を全身麻酔科で実施。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 患者は精神遅滞・下顎小顎および気管偏位を伴っていた。
  • 全身麻酔下歯科治療が施行されたが、挿管困難であり、麻酔導入に約1時間を要した。
  • 抜管後にSPO2が44まで低下し、ラリンジェルマスクを再挿管し、90まで回復したが呼吸が安定せず同日気管切開を行った。

医療事故発生の要因

  • 術前より下顎小顎、気管偏位および狭窄が認められ、挿管困難が予想されたが、長時間の挿管手技により咽頭部の浮腫や損傷により気腫が生じたのだと考えられる。
  • 肺水腫の原因としては、麻酔時間の延長により輸液量が増大したことが考えられる。

改善策

  • 挿管困難が明確になった場合は、麻酔下に対して最初からファイバー挿管などを施行する。
  • 咽頭喉頭部単純X線(正・側)または同部CTなどを事前に撮影し、麻酔科に情報提供する。

事例155:部位取違えに関する医療事故

実施した医療行為の目的

  • 患者は右側顎関節の軽度疼痛及び違和感を主訴に初診で受診。
  • エックス線撮影後、担当歯科医師が患者の口腔内診査を行ったところ、右側上顎智歯相当歯肉部に圧痛を認め、パノラマエックス線写真により右側上顎埋伏智歯埋が確認できた事から右側上顎智歯周囲炎と診断し、埋伏歯抜歯手術が施行された。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 撮影を担当した診療放射線技師は、パノラマエックス線撮影の際にマーカーにL標記を使用したが、現像後の写真に患者氏名ラベルを貼付する時点で、R標記で撮影したと思い込み、パノラマエックス線写真のみR標記を使用した時と同じ写真の状態(表裏逆、L及び写真ナンバーも逆標記)で患者氏名ラベルを貼付し診療科へ届けてしまった。

  • 通常、放射線科歯科医師による現像後のエックス線写真の読影を行うが、当日はスタッフも少なく診療科内も混雑していたため行われず、誤りを発見出来なかった。

  • 担当歯科医師は、撮影されたパノラマエックス線写真により右側上顎智歯埋伏歯が確認できた事から右側上顎智歯周囲炎と診断し、埋伏歯抜歯手術が予定された。

  • この時点で担当歯科医師はパノラマエックス写真が表裏逆の状態でラベルが貼付されている事に気が付かなかった。

  • 手術当日、患者の右側上顎部歯肉に局麻施行後、フラップ形成しマイセルマレットにて骨削除を行ったが埋伏智歯の存在が認められなかったので、複数の歯科医師で再度確認したところ、パノラマエックス線写真が表裏逆になっておりその状態で患者氏名ラベルが貼付してある事に気が付いた。

  • 右側上顎埋伏智歯は正しくは左側上顎埋伏智歯であり、結果的に左右部位を取り違えて手術を行ってしまった。

医療事故発生の要因

パノラマエックス線撮影は、R標記(写真の向かっって左下部にRと撮影番号を写し込む)が頻度的には多いため、L標記(写真の向かっって右下部にLと撮影番号を写し込む)で撮影しながらも、R標記と思い込み、実際の写真の左下部に反転したLと番号が標記されているにもかかわらず、撮影者も担当歯科医師も思い込みにより、誤りを発見できなかった。

改善策

  • L標記による撮影は頻度的に少ないため、R標記のみを使用して撮影を行う。
  • 現像後のエックス線写真の確認を強化徹底する。
  • 診療科においては、エックス線写真が表裏逆になっていない事を標記されたフィルムナンバー等で確認するほか、口腔内全体の所見とエックス線写真を診て左右の誤りがないか確認をする。

事例156:治療・処置の実施に関する内容に関する医療事故

実施した医療行為の目的

狭心症のため入院局所麻酔下の右下6抜歯抜歯を目的で入院。
歯科外来にて局所麻酔下で右下6抜歯術施行。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 右下6抜歯依頼で近医歯科医院より紹介初診。
  • 狭心症のため、入院局所麻酔下の抜歯を目的に入院。
  • 歯科外来にて局所麻酔下で右下6抜歯術施行。
  • FmCはほぼ脱離状態であったため除去を行った。
  • 残根の抜歯を行った。
  • 近心根と遠心根は分離していたためそれぞれヘーベルにて抜歯を行ったが、骨植がよく難抜歯であったため、タービンにて残根と骨とのスペースを拡大し、それぞれ抜歯を行った。
  • 抜歯部の縫合、止血を確認し終了。
  • 翌日退院。
  • 再診時は特に異常所見なく診察終了としたが、後日、紹介元の歯科医院にてエックス線撮影を行ったところ、歯根の一部が残存していたことが判明。

医療事故発生の要因

  • 抜歯により根の一部が残存することは起こり得る。
  • 抜歯後に抜去した歯根の形態を確認したが、再現できたと判断したためエックス線撮影を行わなかった。
  • 直後(入院中)にエックス線にて抜歯窩の確認を行っていれば残根に気付くことができた。

改善策

  • 分割抜歯を行った際は、エックス線撮影を行い確認を行う。
  • 抜歯した歯根をガーゼで拭い、歯根の形態を必ず確認する。
  • 抜歯窩洗浄時、残根の有無を確認する。

事例157:治療・処置の管理に関する医療事故

実施した医療行為の目的

  • 患者は右側頬粘膜癌で、センチネルリンパ節生検 、右側全頚部郭清術、頬粘膜悪性腫瘍切除術、全・分層植皮術をうけ術後19日目であった。
  • 頬部の瘢痕拘縮に伴う開口障害が生じていたため開口訓練を開始した。
  • 歯科口腔外科では、開口訓練時に30分程度の赤外線照射による理学療法を行っている。
  • 当患者は、術後19日目に赤外線照射による開口訓練を開始した。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 患者は、開口訓練のため歯科外来で赤外線照射を行った。
  • 当事者はパイプいすに座った患者の右側から右頚部に向けて赤外線灯を置き、患者と機械の間隔を30cmあけて照射を開始。
  • 患者は、照射開始後眠ってしまい、赤外線灯に本来の位置より接近したため、右頚部にピンポン球大、右肩に直径4cmの水疱を形成する2度の熱傷を負った。
  • 皮膚科で軟膏処置を継続しており、頚部は壊死組織が多いということで熱傷後28日目にデブリートメントの処置が行われた。
  • 尚、原疾患の治療に放射線治療が適応であるが熱傷の部位が放射線照射部位にあたるため治療が開始できない状態である。

医療事故発生の要因

  • 赤外線照射時患者は座位で行うが椅子は折り畳み式のパイプいすを使用していたため、患者が眠ってしまったりして動いたときは容易に体位が変わり赤外線灯との距離が保てない状態であった。
  • 赤外線灯が歯科診療台の近くに設置されているため、プライバシー保護の目的でカーテンを取り付けているので、眠ってしまった患者を発見することができなかった。
  • 患者の照射を始めたことを医師が外来看護師に伝えていなかったため、看護師が様子を見に来なかった。

改善策

  • 患者の了解を得て看護師から患者が見えるようにカーテンを開けておく。
  • 照射開始したことを看護師に必ず伝える。
  • 照射中、頻回に患者の状態を観察する(照射器具と照射野の距離、照射部位の皮膚の状態)。
  • 患者に声をかける。

事例158:医療行為以外の問題に関する医療事故

実施した医療行為の目的

本件は医療行為に関連したインシデントではない。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 外来待合に座っていた患者(医科入院中)の名前を呼んだ際に、ソファから立ち上がる途中に前方に向かって右半身を下にする形で転倒。
  • 患者に確認したところ痛み等の訴えがなかったため、そのまま診療。
  • 転倒があったことから、念のため、入院中の病棟にクラークを通じ看護師に迎えに来てもらったが、帰室後に右第5中足骨の骨折が判明。

医療事故発生の要因

  • 足を組んだ状態で長時間待つことにより足の痺れを招いた可能性がある。
  • 発見者(歯科医師)から病棟看護師への直接の連絡をしていないことから、骨折の発見が遅れていた可能性がある。

改善策

  • 治療室に呼び入れる際には、患者から目を離さないようにする。
  • 入院患者に転倒等が発生した場合は、できるだけ迅速に当該病棟に連絡する。
  • 連絡は医療者が直接行うようにする。

事例159:部位取違えに関する医療事故

実施した医療行為の目的

右下顎8番・7番の完全埋伏歯で、今回は、8番の抜歯予定だったが、部位間違いで7番を抜歯した。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 施術前に患者と手鏡を見せ、「今日は、こちらのこの歯を抜きますね。」と部位確認を実施後、麻酔をかけた。
  • 7番・8番完全に埋伏している認識が、施術中に7番は萌出しているものと思い込み、8番のつもりで7番を抜歯してしまった。

医療事故発生の要因

  • 通常番は萌出している。
  • 開口量が少なかった。

改善策

  • 今まで通り、患者と抜歯予定部位を確認する。
  • 歯科医師2名で、抜歯直前に画像と部位をダブルチェックする。

事例160:誤飲に関する医療事故

実施した医療行為の目的

義歯の修理。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 新しいクラスプ(金属のばね)を義歯に付ける操作を口腔内で行っていた。
  • 義歯の着脱を繰り返していたが義歯に歪みが生じてクラスプがついたまま義歯の一部が破折。
  • 舌全摘+喉頭全摘であったため、口腔内に留まらず、そのまま誤飲。
  • 通常であれば、口腔内に異物が脱落してもそのまま口腔内に留まるが、術後で舌がないため、異物を留め置くことや排出することが困難であった。
  • 喉頭摘出後であり、脱落物が食道へ落ち込みやすい状態であった。
  • X-Pにて誤飲物が胃内にあることを確認し、内視鏡下にて全摘出。

医療事故発生の要因

  • 義歯は、3~4年目のもの。経年劣化を考慮する必要あり。
  • 舌全摘+喉頭全摘であったため、口腔内に留まらず、そのまま誤飲した。
  • 通常であれば、口腔内に異物が脱落してもそのまま口腔内に留まるが、術後で舌がないため、異物を留め置くことや排出することが困難であった。
  • 喉頭摘出後であり、脱落物が食道へ落ち込みやすい状態であった。

改善策

  • 不可避的に発生しうることであるため、改善策はない。

事例161:治療・処置の実施に関する医療事故

実施した医療行為の目的

  • 15年前右乳がん術後、11年前骨転移、肝転移、リンパ節転移に対し化学療法、放射線治療を行った。
  • 5年前下顎骨骨髄炎を診断、下顎骨区域切除・チタンプレート再建術を施行した。
  • 4年前プレート露出、徐々に拡大し、ネジが取れて板(プレート)がぐらぐらになったと今回受診。
  • ハーセプチン、TS-1内服後副作用のために他院緊急入院し経静脈栄養を行っていた。
  • 全身状態不良、予後不良と診断され、入院手術は無理な状況であったが5分粥経口摂取が可能となり、悲願だったプレート除去を希望して入院となった。
  • 局所麻酔下で約30分くらいの時間を要して再建プレート、スクリュー2個除去手術を行った。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 検査結果上、白血球数4810 赤血球数163万 血色素量5.3 ヘマトクリット値15.9 リンパ球 9.0 アルブミン2.0 CRP0.9 INR 1.44 PT-活性 46.0 アルカリフォスファターゼ 466 尿素 35 クレアチニン 1.29 貧血・低栄養状態で手術に対して体力的に耐えられるかどうかを含めて血液内科に紹介、その結果血液凝固的には手術は可能と判断。
  • 入院後は反応が鈍い時があり、血圧も70から80代で状況を配偶者に説明し、手術を希望されるという返事であったので予定通り5日後手術とした。
  • 手術当日朝、朝食を摂取。
  • 看護師の呼びかけに反応がないと連絡があり病室で患者の反応があることを確認し、一時的な意識消失と判断、輸血を準備し、酸素3リットルで開始して手術を行うことにした。
  • 局所麻酔下で手術を施行、術前術後で意識消失はなく血圧は70台、手術後患者からありがとうございましたと発言も聞かれた。
  • 帰棟後病棟HCUで輸血を開始、経過観察を行った。
  • バイタルサインに著変はなく、問いかけにもうなずいていた。
  • 17時呼びかけに反応がないと看護師から報告があり診察、意識がない状態で臨床腫瘍科、救急科、麻酔科医師等に相談、脳外科医師に救援要請し頭部mRI施行脳血管障害は認められなかった。
  • 乳がんの主治医に連絡、もともと血圧は低めで、在宅で経過中にも呼吸停止があり気管挿管をした経緯があったなどの情報があり、前医入院時の経過から乳がん術後の全身状態の悪化による可能性を考慮して配偶者に病状、予後不良の可能性を説明し、緊急時の延命処置を希望されないことを確認。
  • 酸素投与と末梢点滴で経過、心拍数が徐々に低下し、死亡を確認。

医療事故発生の要因

  • 検査結果から手術に耐えられるかどうかも含め血液内科に紹介、手術可能と判断した。
  • 患者 配偶者の希望の手術であった。
  • 輸血を準備して 酸素投与し、手術にのぞんだ。
  • 手術中はバイタルサインに変化なく30分強で手術は終了した。
  • 局所麻酔科の手術で麻酔による影響は考えにくい。
  • 手術後患者の反応も確認できた。
  • 意識がないとの報告に対し、診察、救援要請、頭部mRIなど対応ができていた。
  • 脳血管障害による意識障害でない鑑別を行った。
  • 前医へ連絡し、情報収集を行った。
  • 配偶者に病状の説明を行い、治療法の確認を行った。

改善策

全身状態の低下している中での手術で医療チーム全体として協議をして対応が出来るように調整をする

事例162:治療・処置の実施に関する医療事故

実施した医療行為の目的

多数歯齲蝕にて鉗子抜歯。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 装着されていたポストクラウンが脱離。
  • 鉗子から脱落し、飲み込まないように声掛けを行ったが反射的に誤嚥。
  • 咳を複数回されたが吐出されなかったため、胸部単純X-P撮影を行った所、脱離下ポストクラウンが左主気管支に落ち込んでいる事を指摘された。
  • 胸部CTにて精査を行い、ポストクラウンは左主気管支あることを確認。
  • 消化器外科へ連絡し当日中に全身麻酔下、内視鏡にてポストクラウンを除去。
  • 手術後、家族に経緯を説明し謝罪した。

医療事故発生の要因

  • 不明

改善策

  • 補綴物装着歯の抜歯時には補綴物が脱離する物と想定して抜歯を行う。
  • 抜歯時には歯科用バキュームを添える。

事例163:ドレーン・チューブ類の使用に関する内容に関する医療事故

実施した医療行為の目的

  • 脳幹部血管腫からの出血、血腫による脳幹圧迫による呼吸停止をきたし、気管挿管人工呼吸、ICUで全身管理。
  • 血腫除去及び血管腫瘍摘出目的に緊急手術。腹臥位での後頭下開頭手術を実施した。
  • 手術後に舌に潰瘍形成を確認。歯科医師による加療を行った。
  • その後、舌尖部に壊死組織を確認したため、これを切除した。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 緊急入院し、海綿状血管腫瘍摘出術を実施した患者。
  • 他院入院中であったが、前回の入院から5ヵ月後の深夜、再出血を認めたため当院に緊急搬送・入院。
  • 入院6日目、自発呼吸停止。気管内挿管後、緊急手術(腹臥位での後頭下開頭手術)を行った。
  • 翌日、挿管チューブの舌接触による舌潰瘍形成の疑いがあり歯科口腔外科コンサルト。
  • 舌の膨張及び左舌前方に潰瘍形成を確認し、バイトブロックにより保存的経過観察となった。
  • 気管挿管チューブ抜管。
  • 入院11日目より3点含嗽開始、潰瘍部への保湿継続指示。
  • 患者家族に対しては、舌先に白い偽膜が存在し、偽膜がうまく取れていけば治癒の方向に向かうとの説明がICU歯科医師からなされていた。
  • その後、HCU転床となり、さらに脳神経外科病棟に転床となった。
  • 脳神経外科から歯科口腔外科に診察依頼。
  • 舌先には黄白色の壊死組織があり、わずかな力で除去できる状態であった。
  • 歯科医師から壊死組織があるので切除する必要があることを患者及び患者家族に伝えたところ、突然壊死のことを聞かされたことに大変驚き、その場で説明を求められ、改めて説明すると憤慨され、舌の壊死が生じたことに、これまでの対応を非難された。
  • 患者家族からの原因究明の依頼があり、医療安全管理委員会において医療安全調査専門委員会を設置する事を決定。

医療事故発生の要因

  • 脳幹出血、脳幹部海綿状血管腫に対する手術のため、腹臥位を取らざるを得ず、長時間の腹臥位・頚部前屈により舌の腫脹を来し、気管チューブあるいは歯牙による圧迫から潰瘍を形成し、挫滅の程度が著しかったため徐々に壊死を生じたものと考えられる。
  • 右顔面神経の温存をはかるため右口輪筋に顔面神経モニターを設置したため、挿管チューブを左口角固定せざるを得なかったこと、口腔サイズが小さかったことなども要因としてあげられる。
  • 患者家族への説明に対しては、緊急手術により救命を最優先していたため、細部の合併症について予見して家族に言及する余裕がなかったこと、また、舌壊死組織切除の必要性を家族に説明する際に、歯科医師がそれまでの家族への説明内容の確認が不十分なまま現状説明を行ったことなどがあげられる。

改善策

  • 他科医師間の連携を緊密にする。また、同科では上級医との連携を強化し診療行為の客観的評価を徹底する。
  • 診療記録や説明内容のカルテ記載を徹底する。
  • 他の医師が主体的に診察に関わっている場合、それまでの経緯や説明内容を十分に把握した上でその後の診療を行う。

事例164:治療・処置の実施に関する内容に関する医療事故

実施した医療行為の目的

右側下顎智歯および右側上顎智歯の抜歯手術。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 右側下顎智歯および右側上顎智歯の抜歯手術施行中に、誤って患者の右側下口唇に赤唇から白唇にかけて約1cmの切創を負わせてしまった。

医療事故発生の要因

  • 術者は、まず右側下顎智歯を鉗子にて抜去し下顎の抜歯終了後、上顎智歯の抜歯を開始した。
  • 右側上顎智歯を鉗子にて抜去を試みるが根尖が破折したため、抜歯窩からのアプローチは困難であると判断し、歯肉を切開剥離して抜去することにした。
  • 右側上顎智歯及び右側上顎第二大臼歯部歯肉を円刃刀と彎曲刃を用いて切開し剥離を行うも、破折した根尖を抜去するのが困難であったため上級医に指示を仰いだ。
  • その際に上級医は患者の右側下口唇の赤唇から白唇にかけて約1cmの切創があることに気が付いた。
  • 術者は患者の下口唇の切創に気付いておらず、上級医の指摘により気付いた。
  • 術者の証言から、円刃刀もしくは彎曲刃を用いて歯肉切開をする際の操作中に、右側下口唇を誤って受傷させたものと推測された。

改善策

  • 従来より、診療中における「口腔内損傷」「口腔外損傷」等の予防策・対処法を医療事故防止マニュアルに複数掲載し、注意喚起を行っていた。

≪予防策・対処法≫

  • 縫合針、注射針、メスの操作は明視下で正確に行う。

  • 口腔内操作時は確実に固定点を求めて行う。

  • 過度な力をかけない。

  • 適切な把持をする。

  • 脇を締める。

  • 姿勢、膝、足もとを安定させる。

  • 今回の事故発生を踏まえ、従来通りの「予防策・対処法」を励行するとともに

    • 口腔内への器具器材の出し入れの際には細心の注意を払う。
    • 鉤(線鉤や扁平鉤)などを適切に使用して、術野を確保する。
    • 所属の上級医の監督下に行う。

と事故防止対策の改善を行った。

事例165:誤飲に関する医療事故

実施した医療行為の目的

歯科治療

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 左下4充填後に咬合面を超微粒子ダイヤモンドポイント(バー)にて形態修正中にFGコントラからバーが外れ、口腔内に落下した。
  • 患者を側方に向け、飲み込まないように呼びかけたが患者の口腔内には水が入っており、口腔内からは水しか出てこなかった。
  • また、バキュームでも吸引しておらず、チェアーの周りも探したが見つからず、患者は「飲まれていない」との事だったが、口腔内にはなかった。
  • 無意識にうちに誤飲されたと思い、誤飲、誤嚥を疑い、指導医に報告。
  • 胸部、腹部エックス線撮影を行なった。
  • 腹部エックス線所見にて胃に異物が疑われたために消化器内科に内視鏡下での除去を依頼した。
  • 光学医療診療部にて十二指腸内のバーを摘出後、休憩を取って頂いた。
  • 経緯を説明、謝罪した。
  • 体調回復したため、タクシーで帰宅された。

医療事故発生の要因

  • 不明

改善策

  • 固定の確認を確実に行う。
  • 脱落時は患者に状況説明し冷静に対処する。
  • バー、器具の脱落が起こりえる可能性があることを伝える必要がある。
  • 事前に脱落時には患者にも落ち着いて、吐き出してもらうように対応して頂けるように伝える必要がある。

事例166:部位取違えに関する医療事故

実施した医療行為の目的

  • 4年前より顎変形症で矯正治療を受けていた。
  • 4ヶ月前に右下8番の埋没智歯の抜歯施行。
  • 今回、左下8番の智歯を抜歯する予定であった。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 4ヶ月前に右下8番の埋伏智歯を抜歯。
  • その際、カルテに「左下8番抜歯」と誤記載。
  • 今回、反対側の左下8番の埋没智歯を抜歯する予定であった。
  • カルテの記載内容から左下8番は抜歯済みであると判断し、右下8番を抜歯することにした。
  • 局所麻酔、粘膜切開を施行したが、粘膜下組織の状態が埋伏智歯抜歯の所見であったので、歯科用X線にて両側下顎智歯部の撮影を行ったところ、右下8番は既に抜歯されており左下8番に埋伏歯を認め、左右部位取り違えを認識した。
  • 粘膜切開を行った右下8番部の粘膜縫合を行い、事象を患者と付き添いの母親に報告し謝罪。
  • また、左下8番の抜歯を同日施行するかを相談したところ、同日抜歯。
  • 左下8番の抜歯は通常どおり抜歯を終了したが、右下8番からの出血が継続し60分ほど圧迫して止血。
  • その後、抜糸し、矯正治療再開。

医療事故発生の要因

  • 右下8番抜歯を施行した際のカルテ記載を「左下8番抜歯」と誤記載した。
  • 誤記載されたカルテ内容で、今回は右下8番の抜歯として処置を開始した。

改善策

  • 両側の抜歯の際にはカルテ記載に関する複数人(歯科医師2名、歯科衛生士1名)による左右の確認を行い、その旨カルテに記載する。
  • 抜歯前には左右確認のカルテ記載を歯科医師、歯科衛生士により確認し、その旨カルテに記載する。
  • 抜歯後のX線撮影を左右の判別が可能な撮影法(パノラマX線)にて行う。
  • 1か月以上の時期を隔てての反対側抜歯の際にはX線による確認を行う。

事例167:治療・処置の実施に関する内容に関する医療事故

実施した医療行為の目的

左下8部、下顎水平埋伏智歯の抜歯。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 歯科医師Aは左下8部の難抜歯(下顎水平埋伏智歯)を外来局所麻酔下にて行った。
  • 歯科医師Bにアシストをついてもらった。
  • 左下8部に浸潤麻酔後、左下8部遠心切開、左下7部縦切開を加え、下顎骨骨膜を剥離。
  • 左下8部歯冠を明示し、左下8部の頬側歯槽骨をストレートエンジンのラウンドバーで削合。
  • 左下8部の歯冠分割をエアタービンにゼクリアバーを付けて行った。
  • その際、歯冠切断時のエアタービンの操作が不適切で、ゼクリアバーが歯冠に嵌入し停止。
  • エアタービンのエンジンを回さずに取ることは困難であり、エンジンを回し、舌側方向にこねるようにしてゼクリアバーを除去。
  • 改めて左下8部の歯冠分割を行ったが、患者が呼吸困難感を訴えたため、処置を一時中止。
  • 看護師Cにバイタルを確認、SpO2 99~100、血圧も140/90台と特に大きな問題は無かった。
  • 歯科医師Aは看護師Cに酸素投与の準備を指示。
  • 歯科医師Aは患者のオイフを外し、アナフィラキシー症状、顔貌、全身を確認。
  • 蕁麻疹がないことを確認したが、1、2分後急激に顔貌、頚部の腫脹を認め、顔面、胸部を触診したところ握雪感を触知したため、皮下気腫が発生したと判断。
  • 診療科長Dに報告、緊急CT撮影、末梢静脈の確保を実施し、皮下気腫の領域を確認し、経過観察目的で緊急入院となった。

医療事故発生の要因

  • 歯冠分割の際にエアタービンを用いて歯冠分割を行う。エアタービンはタービンヘッドから圧縮空気を排出する構造になっている。その際に圧縮空気が舌側の隙に入り込み、皮下気腫を生じたものと思われる。
  • 今回は歯冠分割時のエアタービンの操作が不適切で、ゼクリアバーが歯冠に嵌入し、停止した。エアタービンのエンジンを回さずにとることは困難であり、エアタービンヘッドを舌側にこねるように動かし、ゼクリアバーを歯冠から除去した。その際に圧縮空気が舌側隙に入り込んだものと思われる。

改善策

  • 歯冠分割の操作を慎重に行い、ゼクリアバーの嵌入を極力避けるようにする。
  • タービンヘッドが舌側方向になるべく向かないようにする。

事例168:検査の実施に関する内容に関する医療事故

実施した医療行為の目的

  • 右側下顎6番の金属冠脱離にて、近医歯科受診。
  • う蝕にて根管治療を行い、治療後半年以内に、頬側に排膿路を形成し違和感を認め、洗浄を行ったがその後も改善せず。
  • 他科初診。以後治療を継続。
  • 経過良好につき補綴治療を開始。
  • 補綴物について元々アレルギー体質のため、保険での金属冠と自費での金属を使わない冠での選択で迷い、金属冠を何度も付け外ししたくないこともあり、金属アレルギー有無の精査を希望。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 金属アレルギーの検査は汗をかく時期だとあせもがでたりするので、秋頃に検査を行ったほうが良いこと、それまでは、金属冠をつけるのではなく仮歯で過ごした方が良いこと、アレルギーパッチテストはシールを背中に1日貼って、翌日の朝患者自身で剥がし、2、3、7日目に病院でアレルギー反応の有無を確認することを説明。

  • パッチテスト当日、16種類の薬品を背部に貼付。

  • 16種類は既製品でパッチテストを行ったが、塩化チタンはインプラントの埋入などに使用するため、2年前より他院で採用されていたプロトコルを参照し16~17%の四塩化チタン溶液を0.1%に希釈し、アレルギーパッチテストに使用。

  • 希釈した塩化チタンは遠沈管に保管し外来の鍵付き冷蔵庫に保管していたが、次の希釈用に原液の試薬ビン(パッチテスト用と記載)が棚を別にして同じ冷蔵庫に保管、また、希釈した溶液を引いたシリンジも同じ冷蔵庫に保管されていた。

  • 17種類の薬剤を貼付した歯科医師は研修医の時期に複数回パッチテストを施行した経験があったが、四塩化チタンに関しては前回まで使用したシリンジがなくなっていたため、原液試薬ビンより採取しパッチテストに使用。

  • テストは試薬をパッチテスト専用のテスターに1滴ずつしみこませ、背部皮膚に4列に貼付。

  • テスト当日、帰宅後数時間し、患者が背部2箇所の強い掻痒感を訴え、再度来院。

  • 2番の塩化パラジウム、13番の四塩化チタン貼付部分に皮膚の発赤を認めた。

  • 本日で貼付を終えると正確な判定が出来ないことを説明。

  • 一旦除去し、他金属の反応を経過観察することを提案したが、患者は今回で全ての検査を終わらせることを希望。

  • そこで背部は2番、13番のみ除去し左上腕への張り替えを提案し了承いただき、背部の2番と13番のみを除去し上腕部に新しく塩化パラジウムおよび四塩化チタンを貼付し、四塩化チタンは再度原液を使用した。

  • 2日目の判定で来院。

  • 背部と上腕の四塩化チタン貼付部に一致した部位に強い痛みを訴えられており、同部は強い発赤と糜爛/潰瘍を認めた。

  • 7日目の判定で来院。

  • 背部および上腕の四塩化チタン貼付部に強い発赤と糜爛/潰瘍形成を認めた。

  • 皮膚潰瘍に関して患者より他院皮膚科受診を希望されたため、診療情報提供書を作成し、皮膚状態の写真を添えて文書作成を行った。

  • 患者の受診した他院皮膚科医師より電話連絡があり、使用した試薬の詳細および皮膚への貼付が可能な物なのか問い合わせがあった。

  • 使用した薬剤が四塩化チタンの希釈溶液であり、他施設でのプロトコルを参照に使用していることを説明した。

  • 同院より詳細について文書での照会あり。

  • パッチテスト施行医に事実確認を行い、四塩化チタンの原液を使用したことが明らかとなった。

医療事故発生の要因

  • 薬液の原液ビンに「パッチテスト用」と表記があり、希釈液と同じ保存庫内に存在したことが最も大きな原因。

改善策

  • 試薬の表記と保存について
    • 原液ビンに「原液 そのまま使用禁」と表記して別保存庫へ移動し、希釈したもののみを外来の鍵付き保存冷蔵庫に保管することとした。
  • 研修医、新任医師への指導について
    • 外来人員の入れ替え時にアレルギー試験の手技に関する指導を再徹底する。試験を行う際は、患者へ使用薬剤とリスクについて説明を十分に行う。
    • 患者へ手渡す注意事項に、「~かゆみが出た場合は、かかない様に注意してください。」を「~かかない様に注意し、担当医までご連絡下さい。」と変更した。
  • 検査施行後、皮膚症状の強い症例への対応について
    • 大水疱、潰瘍を形成した場合、直ちに皮膚科へコンサルトを依頼する。

事例169:部位取違えに関する医療事故

実施した医療行為の目的

右下顎埋伏智歯の抜歯。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 歯科・口腔外科外来にて、術前エックス線写真で手術部位を確認し、右下顎埋伏智歯の抜歯を開始。
  • 1つ手前に位置する右下顎第2大臼歯も埋伏している状態であった。
  • 歯肉の切開を行い、歯肉下に埋伏歯を包み込む歯嚢を確認。
  • 通常埋伏智歯は、骨及び歯嚢に被覆しているが、今回第2大臼歯も一部骨に覆われていた。
  • 歯嚢様組織に完全に被覆していたため、その段階で第2大臼歯を埋伏智歯と誤認したまま、周囲骨を削除し、歯冠を3分割した。
  • 3分の2歯冠を除去し、残りの3分の1の歯冠除去時、埋伏智歯にはないはずの歯根があった。
  • 歯冠除去した歯が右下顎第2大臼歯と認識した。
  • その後後方に埋伏智歯と思われる歯冠の一部を確認し間違いが分かった。

医療事故発生の要因

  • 右下顎埋伏智歯及び第2大臼歯が歯嚢に覆われて、一部骨に埋まっていた。
  • 抜歯時、智歯と思い歯を確認しなかった。

改善策

  • 下記を手順に追加
    • 手術前に、医師・第一助手でタイムアウトを行う。
    • 抜歯前、エックス線写真を確認しながら、医師と第一助手でダブルチェックを行い確認する。

事例170:治療・処置の実施に関する内容に関する医療事故

実施した医療行為の目的

歯槽骨吸収異常に対する治療。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 患者は、左上45歯槽骨吸収異常に対する左側上顎洞底挙上術及びインプラント埋入術を全身麻酔下で行うために、歯科手術室へ入室。
  • 歯科麻酔科医Aは気管挿管を行い、その後、綿入りガーゼ1枚を咽頭パックとして使用することを歯科医師Aが歯科麻酔科医A、B、器械出し歯科衛生士及び外回り看護師に宣言し、挿管チューブ周囲に挿入。
  • 昼ごろ、縫合手術以外の手術が終了したために歯科医師Bは手をおろし、手術室を退室。
  • その後、歯科医師A、歯科医師Cにより縫合を開始。
  • 縫合終了後、歯科衛生士と看護師により咽頭パックガーゼも含めて、ガーゼカウントを行い、歯科医師Cが手術終了を宣言。
  • この時に咽頭パックを除去していなかった。
  • 歯科麻酔科医A、Bは患者を覚醒させ、咽頭内吸引、抜管を行った。
  • その後、歯科医師A、Cが咽頭パックを除去していないことに気付き、患者に確認したところ、飲み込んだ可能性が考えられた。
  • 直ちに胸腹部単純X線写真を撮影したところ、胃部に線入りガーゼの存在を認めたため、内視鏡診療科へ電話連絡した。
  • 胃内の線入りガーゼを内視鏡で抜去。
  • 抜去されたガーゼを歯科医師Cが確認。

医療事故発生の要因

  • 執刀医が手術終了時にパックガーゼの除去を行わなかった。
  • 上級医及び介助者が除去の確認を行わなかった。
  • 歯科麻酔科医が口腔内、咽頭内の異物をよく確認せずに挿管チューブを抜管した。

改善策

  • 執刀医、上級医及び介助者による確実に咽頭ガーゼの除去を行うとともに、その確認を徹底する。
  • 歯科麻酔科医による抜管前の口腔内及び咽頭異物の確認を徹底する。

事例171:不必要行為の実施に関する医療事故

実施した医療行為の目的

術者は患者に浸潤麻酔実施後、患者に体動の可能性を考慮して、使用済みの針付きカートリッジを自らトレーに戻さず、介助者に手渡すことにした。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 当事者は差し出されたカートリッジを受け取るのではなく、リキャップする行動を取ったため、右手親指に針を刺してしまった。

医療事故発生の要因

  • リキャップしないことを原則としているにも関わらず、差し出されたカートリッジにリキャップする動作をしたため。
  • 介助者に対し、差し出す側も声かけ確認を行なっていなかった。

改善策

  • リキャップ禁止の再度周知徹底
  • 研修医、新規採用医員等へ再教育(研修会等)
  • サイドテーブル・ミニペットの設置検討
  • 術者・介補者間での注射器の受け渡しやリキャップに関する取り決め・指示の徹底

事例172:部位取違えに関する医療事故

実施した医療行為の目的

右埋伏智歯抜歯

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 埋伏した右下顎智歯抜歯ならびに右側下顎第2大臼歯のうち、智歯の抜歯を行う予定であったが、誤って前方に位置して埋伏していた第2大臼歯の抜歯を行った。

医療事故発生の要因

  • 確認、観察を十分に行っていなかったため。
  • X線画像を確認する医療端末が処置チェアーより離れており、処置過程でのX線写真を用いた確認が不十分となった。

改善策

  • 処置前に患者とともに処置する歯牙を確認する。(患者による指差し等)
  • 抜歯処置開始時には、タイムアウトを行い、患者自身の最終確認を受けるとともに、アシスタントあるいは周囲の人間にもその内容の確認を負ってもらう。
  • 埋歯抜歯では切開線を描記することを励行。
  • 判別が難しい症例では、処置依頼医師の立ち会いを受ける。
  • 歯種の記載はFDI方式のみに頼らず、確実に伝達できるように配慮する。
  • レントゲン写真:PC画面に頼らず、プリントアウトしたものを用意し、その上に処置歯のマーキング並びに処置予定歯の歯牙番号などを記載し、処置中に随時確認しやすい場所に掲示する。(患者説明時に記入するのが望ましい。)

事例173:異物の体内残存に関する医療事故

実施した医療行為の目的

口腔外科の手術で左の下顎骨を切るため、レシプロの刃を使用することになり、術中使用した。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 下顎骨を切断するため、レシプロケーティングソーブレード0.25mmを使用。
  • 執刀医がレシプロの刃を使用し左の下顎骨を切って下顎の腐食した骨を取り除き、閉創。
  • 上下の抜糸をし手術を終了した。
  • 口腔外科の医師から手術部に連絡があり、昨日手術した患者のレントゲン撮影をしたら、レシプロの刃が体内残存しているとの報告を受けた。
  • 直ちに全身麻酔科にて除去術を行った。

医療事故発生の要因

  • 添付文書によれば「ブレードの先端が欠けることがあるので、オトガイには0.4mm以上の厚さのブレードを使用すること」となっているが、当事例はオトガイへのアプローチではなかった。
  • 後片付けも、針のダブルチェックは外回りとしたが、レシプロの刃はダブルチェックせず、針箱に破棄してしまった。

改善策

  • 使用後のボーンソーの形態を術者と看護師で再確認し、周知徹底する。
  • 以上が疑われた場合はレントゲンで確認する、丈夫な製品に換える。

事例174:医療行為に関する医療事故

実施した医療行為の目的

右下5埋伏歯および右下8埋伏抜歯。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 抜歯の際使用していた器具(TPSドリル)が過度に発熱し、触れていた患者の口唇に熱傷を負わせてしまった。

医療事故発生の要因

  • TPSに装着するハンドピースが故障していたため過度に発熱したものと思われる。
  • TPS使用中、ハンドピースから黒色のオイルのようなものがにじみ出てきた。
  • 故障の原因としてハンドピースのメインテナンス不良が疑われる。

改善策

  • 不明

事例175:誤飲に関する医療事故

実施した医療行為の目的

左下6番の歯根破折があり、疼痛・腫脹など感染源となるためこれを取り除く目的。

医療事故の当事者の職種

歯科医師

医療事故の詳細

  • 左下6番を鉗子にて脱臼・歯牙抜去しようとした際にFCKが脱離しこれを飲み込んだ。
  • 肺に入っていないかの確認のため胸部レントゲンを撮影。

医療事故発生の要因

  • 内部でう蝕が進行しており専用の器具で刺激をくわえたことにより冠が容易に脱離してしまった。

改善策

  • 口腔内をガーゼで覆うなどの予防。
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